とびとびくん(無線カメラ)開発秘話1

HD化した時にスタジオカメラのような形状を考えてしまって、ハンドカメラとして使用することが難しくカメラの小回りが悪くなり、取材の範囲が狭くなると考えました。

そこで、ハンドカメラとして小回りのきく「無線カメラ」の開発を検討しました。

まず、HDMIを無線LANの帯域の周波数(5GHz帯)で飛ばす「WHDI」という規格の装置があるという事を調べました。

放送業務用としては、SKYWAVE(ランサーリンク社製)やAir Tube(アイデン社製)の製品が有名だと思いますが、家庭用でも同じ規格の製品が格安(2万程度)で存在することを調べました。

家庭用の中で比較的伝送距離の長い製品を探したところHD  WARPVISION(ATEX社製)を試してみました。

この製品は、一般的に遠くにあるプレーヤーの映像を伝送してテレビに映し出します。また、リモコンを使用してのプレーヤーの操作も可能です。

屋内の学校の廊下で実験したところ、廊下の端から端(約50m)まで届きました。予想以上に遠くまでHDの映像がノイズなく伝送することができました。

しかし、カメラ側に製品を取り付ける方法と、電源が付属のACアダプタでは取り回しが難しいのでバッテリーで動くようにすることを検討し始めました。

電源は、最初は乾電池を使用しようと思いましたが、すぐに電池が無くなってしまうのと、使い捨てなのでコストがかかるため違う方法にすることにしました。また4本だと電圧が高すぎるし、3本だと低い。

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HD WARPVISION の電源電圧は5Vです。

次に考えたのは、エネループですが充電式でコスト素晴らしいのですが、4本だと少し規定の

電圧に足りない(1.2V×4=4.8V)ので、5Vのモバイルバッテリを考えました。

しかし、今では安くなりましたが開発当時はかなり高めでした。

そこで、コストが安くて、いつも放送部で使用しているカメラのバッテリー「L型バッテリー」を使用

しようと思いました。これだと互換バッテリなどはかなり安く売られています。

ここで、問題が発生します。L型バッテリの電圧は7.2Vでかなり高めで、電圧を落してやる必要が

あります。

互換バッテリーを多く作っているNEP社に相談したところ、8,000円でアダプターを作ってくれ

るそうです。アダプターまで開発する時間がなかったので、注文しました。

そして、完成したのが次の写真のシステム(壱号機)です。私たちはこのシステムを「とびとびくん」と愛称をつけて呼んでいます。

2年前に行われた富山県高校文化祭でBMD社の1M/Eスイッチャとともに実戦投入しました。これは、1年後の全国総文祭のプレ大会で、県内では最大のホール「オーバードホール」で行われました。

HD WARPVISIONの映像到達距離はカタログ値30mですが、オーバードはかなり大きいホールなので映像が途切れることを覚悟していたのですが、結果は良好で、ホール内のどの位置からも途切れることなく映像が送れました。

これは、反射波も受信しているのではと推測されます。アナログでは反射波はゴーストなどの厄介な面が多いのですが、さすがデジタルとみんな喜んでいました。

このシステムは、プロの方もたいへん驚かれていました。地上波、ケーブル、音響の方々からたいへん反響をいただきました。

この成功で半年後の放送部の北信越大会(全国総文放送部門のプレ大会)、去年の全国総文に、大いに自信をつけました。

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2件のフィードバック

  1. sudoko より:

    興味深く読ませてもらいました。無宣伝送時の遅延はどれくらいありますか?

    • いずみくん より:

      カタログ値では、1mm/secで1フレーム以下と記載させれていました。
      実際に使用してみても遅れは感じないほどでした。